ピアレビュー(査読)モデルについてのご紹介
今回は、ピアレビュー(査読)モデルについて、開発元であるAries Systems社のブログ記事で紹介されておりましたので弊社訳にてお届けいたします。
元記事はこちらをご覧ください。(英語)
はじめに
公平な査読は学術研究の完全性と品質を保つために不可欠なものです。
もともとは、17世紀のヨーロッパで始まり、20世紀半ばに「peer review(査読)」という用語が生まれてから一般的になりました。査読の方法は出版社や学術コミュニティのニーズにより異なります。Aries Systems社では、2022年のオンラインユーザ会(EMUG 2022)にて査読のモデルを以下のように定義しました。
(オンラインユーザ会(EMUG 2022)でのピアレビュー(査読)モデルのディスカッション動画はこちらから視聴可能です。(英語))
ピアレビュー(査読)モデルについて
SINGLE ANONYMIZED (BLIND) PEER REVIEW(シングルブラインド査読)
査読者が投稿者に対して匿名のピアレビュー(査読)モデル
メリット
- 正直な査読ができる
- 査読者は、著者の過去の研究や実績から知識の幅を知ることができる
デメリット
- 著者情報が分かることで意識的、無意識的なバイアスがかかる可能性がある
- 査読者から著者へのコメントが丁寧さに欠ける可能性がある
DOUBLE ANONYMIZED (BLIND) PEER REVIEW(ダブルブラインド査読)
査読者、投稿者が相互に匿名のピアレビュー(査読)モデル
メリット
- 意識的、無意識的なバイアスがかからない
- 査読者がコメントに対して批判される可能性が低い
デメリット
- 研究の種類やスタイルによって、査読者や著者が特定できる可能性がある
- 査読者から著者へのコメントが丁寧さに欠ける可能性がある
TRIPLE ANONYMIZED (BLIND) PEER REVIEW(トリプルブラインド査読)
査読者、投稿者、担当編集委員がお互いに全て匿名のピアレビュー(査読)モデル
メリット
- 意識的、無意識的なバイアスが著者、査読者、担当編集委員の間でかからない
- 査読者がコメントに対して批判される可能性が低い
デメリット
- 研究の種類やスタイルによって、査読者、著者、担当編集委員が特定できる可能性がある
- 査読者から著者へのコメントが丁寧さに欠ける可能性がある
- フローの間で常に完全なブラインドになっているか確認するために、運用面でコストがかかる可能性がある
OPEN PEER REVIEW(オープン査読)
メリット
- 顕名化により、査読者は著者へのコメントに対して丁寧になる可能性が高い
- 査読者の認知度が上がる
- 査読コメントが公開されることで、著者や査読者が学ぶ機会となる
- 査読の透明性から原稿に対しての信頼度が上がる
デメリット
- オープン査読に同意する査読者を探すことが困難になる場合がある
- 著者や査読者のバイアスがかかる可能性が高い
TRANSPARENT PEER REVIEW(トランスペアレント査読)
査読内容が公開されるピアレビュー(査読)モデル
(査読者の匿名性は査読者自身が選択可能)
メリット
- 査読内容が公開されるため、査読者から著者へのコメントが丁寧になる可能性が高い
- 査読者の認知度が上がる
- 専門家はレビューから洞察を得ることができる
デメリット
- 新人の査読者は経験豊富な著者を批判することをためらう可能性がある
- 査読者の正直さが欠けたり、査読者自体が不足する可能性がある
COLLABORATIVE PEER REVIEW: FLAVOR 1(共同査読1)
査読者はペアや、研究室単位など複数人で査読する新しいピアレビュー(査読)モデル
メリット
- 査読者1人に対しての負担軽減
- 若い査読者の教育の機会になる
- より多様な視点で、より厳密な査読となる
- より新人の研究者は、経験のある研究者よりも現在の研究について最新の情報を持っている可能性がある
デメリット
- 新しい査読モデルのため、既存システムは1回の査読依頼に対して査読者1人のみの操作に限定される場合がある
- 貢献した全ての査読者を評価することが難しい可能性がある
- 所属先や研究室の異動により、査読グループの査読活動に一貫性を欠く可能性がある
COLLABORATIVE PEER REVIEW: FLAVOR 2(共同査読2)
査読者は、著者とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら査読する新しいピアレビュー(査読)モデル
メリット
- 投稿から最終判定までの審査時間の短縮
- 担当編集者は、査読者と著者の繋ぎ役である必要が無くなる
- 査読者はお互いの査読結果を批判することができるため、異なる視点の意見をもらうことができる
デメリット
- 著者と査読者でリアルタイムでコミュニケーションを取れる機能が無いケースが多いため複数のシステムが必要になる可能性がある
- 担当編集委員が、査読者のコメントの強めの表現や建設的ではない言い回しを直すことができない
CROWD PEER REVIEW(多数査読)
大勢の査読者からの意見を仰ぎ多様性を活用した新しいピアレビュー(査読)モデル
メリット
- 投稿から最終判定までの審査時間の大幅短縮
- 査読者の負担減
- 査読者のバイアスを軽減し、多様化が促進される
- 査読者検索や督促等の管理に費やす担当編集者の負担軽減
デメリット
- 専用のソフトウェアが必要
- 従来の査読よりも編集者が精査するフィードバックが多くなる
- 新しい査読モデルで更なる検証が必要
- 集団思考のリスク
- 査読をどう評価するか?
おまけ
ピアレビュー(査読)モデルについて、こんなにも運用の種類があるのだと驚きました。
ちなみに日本学術会議が行ったアンケートでは、日本の学会では実際にシングルブラインド(査読者が投稿者に対して匿名)の査読モデルが一番多い回答結果になったようです。
一方で、望ましい査読様式については、ダブルブラインド(査読者、投稿者が相互に匿名)の回答が一番多い結果となっています。
(参考元:https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-25-k353.pdf)
おわりに
ピアレビュー(査読)モデルについていかがでしたか?
私自身も初めて聞いたものもありました。
日本でも実際の運用が増えていくのでしょうか。これからも興味深くウォッチしていきたいと思います。
Editorial Manager上のフローやブラインド設定について、ご不明な点などございましたらいつでもご相談ください。
ジャーナルのポリシーや目的などを今一度確認いただき、最適なフローで運用していただければ幸いです。
今後も便利な機能や有益な情報を紹介していきます。
次回のブログもお楽しみに!!